Speech Language Hearing Therapist言語聴覚士

私達は、普段当たり前のように「人とコミュニケーションを取る」「食べ物を食べる」という行為をしながら過ごしております。しかし、病気や事故、老化などにより、それが自然にできなくなることがあります。
言語聴覚療法(ST)では、伝えたいのに上手く話せない、何を言われているのか分からない、食べるとムセ込んでしまうなどの問題を抱えている人達が、自分らしく生活ができるように問題の原因を探り、一人ひとりに合った訓練プログラムを考え、訓練を通して支援しております。

言語訓練

  • 失語症へのアプローチ
    失語症とは、脳のことばを司る部分が損傷されることで生じます。ことばを話したり理解したり、読み書きすることが難しくなる障害です。患者様の症状にあわせて、退院後の生活を想定しリハビリテーションを提案します。通常のことばの訓練だけでなく、iPad等を用いたり、時にはゲーム性も取り入れて楽しくコミュニケーションが図れるよう工夫をしております。退院後は外来や訪問リハビリテーションでフォローを続ける方もいらっしゃいます。
  • 運動性構音障害へのアプローチ
    構音障害とは、口唇、舌など、話すときに使う筋肉の運動が障害され、はっきり発音できなくなった状態です。相手に聞き取りやすい発話をするためには、訓練で口の器官を動かすことが必要です。発話症状にあわせた構音訓練や口の体操を行います。また、退院後にご自宅でできる自主訓練なども提供しております。

高次脳機能障害とは、脳へのダメージが原因で起こる見た目ではわからない障害のことです。脳はいくつかの部位に分かれており、どこにダメージを負ったかによって出現する症状も違います。そして高次脳機能障害は外見では判断がしにくいため、知らない人にとっては物覚えが悪い人であったり、怠け者と捉えられてしまうこともあります。そのため、「見えない障害・隠れた障害」とも言われております。症状としては、記憶障害・注意障害・遂行機能障害・社会的行動障害・失語症(失語症も高次脳機能障害の一つです)・失行症・半側空間無視など多岐に渡ります。
脳のどの部分にダメージを負ったかによって症状が大きく異なるため、一人ひとりに合った評価や訓練を行います。当院で用意している検査が数多くあり、正しい評価のもと訓練を行います。また、日常生活での対処法やご家族様の関わり方などについてもご提案させていただきます。

高次脳機能障害の症状の一部
  • 記憶障害:忘れてしまう、覚えられない
  • 注意障害:集中力が低下する、2つ以上のことが同時に行えない、作業を長く続けられない
  • 遂行機能障害:計画を立てられない、計画性なく物事を進めてしまう、臨機応変に対応できない
  • 社会的行動障害:怒りっぽくなる、意欲が湧かなくなる、1つにこだわる、人の気持ちが考えられない
  • 失語症:言葉が出てこない(上手く話せない)、相手の話が理解できない
  • 失行症:道具の使い方がわからなくなる、意図的にできない、真似をしようとするとわからない
  • 半側空間無視:視力に問題がないが目にする空間の半分側に気がつきにくくなる、物にぶつかる

摂食嚥下訓練

嚥下障害とは、食べ物を上手に飲み込めない状態のことです。嚥下障害があると、食事中にムセ込むなどの苦労がつきまとうため、食べる楽しみが減ってしまいます。また、誤嚥(食べ物などが食道ではなく気道に入ってしまうこと)をそのまま放っておくと命を脅かす「誤嚥性肺炎」を招くこともあります。嚥下障害は脳卒中によって生じるだけでなく、高齢になると誰にでも起こり得るものです。
様々な評価や機器、訓練を行い患者様の「口から食べたい」をサポートしております。

物理療法(バイタルスティム・ジェントルスティムの活用)

当院では、楽しく・効率的に訓練をしていただくために、さまざまな機器を導入しております。バイタルスティムとジェントルスティムはその一つで、どちらも機器を装着したまま、嚥下訓練を行うことでさらなるリハビリテーションの効果が期待できます。

バイタルスティム

低周波の電流を流し、飲み込みのための筋肉トレーニングができる機器です。飲み込む力が弱くなると、食べ物や飲み物を誤嚥する可能性があります。顎下にバイタルスティムを装着し、喉の筋肉を鍛えることにより、嚥下機能の改善が期待できます。

ジェントルスティム

「ごくん」と飲み込む喉の反射運動を働きやすくするための機器です。喉に2枚のパッドを貼り、人体の深部にまで到達する中周波といわれる電流を流し、感覚神経に刺激を与えます。喉の感覚を動きやすくすることで、飲み込む際の反射を起こりやすくします。

VF(嚥下造影検査)検査

VF(嚥下造影検査)という飲み込みの検査があります。
バリウムを混ぜた検査用の飲み物や食べ物を実際に食べていただき、X線を照射しながら、どのように口から胃へ運ばれるのかの一連の流れを録画し確認する検査です。

食べ物を認識し口の中へ入れ、咀嚼して飲み込み、咽頭⇨食道⇨胃へと送り込む一連の流れのどこに障害があるかを評価し、安全に食べられる食形態を選定します。
誤嚥性肺炎を防止するためには、安全に食べられる食形態の検討がとても重要になります。VF検査等を用いて正しく評価し、適切な訓練や指導を行います。

歯科との連携

摂食嚥下障害の患者様の中で義歯不適合が多くいらっしゃいます。摂食嚥下障害のリハビリテーションを行うには義歯治療は不可欠です。当院では、訪問歯科医と連携し義歯の作成や必要性の有無のチェックなどを行います。歯科医・歯科衛生士・言語聴覚士が連携して摂食嚥下障害に取り組んでおります。

栄養サポートチームの連携(NST)

栄養サポートチームとは、患者さんに最適な栄養管理を提供するために、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、言語聴覚士などの多職種が協力する医療チームのことです。食事は、身体機能や口腔衛生、心理面などのさまざまな要素によって成り立ちます。摂食嚥下がうまくいかないと、低栄養のリスクに繋がります。各職種の専門性を活かして、協働し、栄養面からも患者様のサポートをしております。

人員配置

当院には20名以上の言語聴覚士が在籍しております。回復期リハビリテーション病院(180床)としても多くの人員配置をしており、当院の強みとなっております。また、高次脳機能障害の勉強会や嚥下の勉強会を日々実施し、患者様により充実したリハビリを提供できるように心がけており、学会や講習会への参加も行っております。