Flow人工膝関節・手術の流れについて

人工膝関節置換術とは?

関節疾患の場合でも、程度が軽い場合は、投薬療法・注射といった保存的療法で症状を和らげることができます。

ただし、痛みが継続する場合や、極端な変形で歩くことができなくなった場合、また関節リウマチが進行した場合には、人工膝関節置換術などの手術療法が必要になります。

人工膝関節置換術とは、傷ついた膝関節を、関節の代替として働くインプラントと呼ばれる人工膝関節部品に置き換える手術です。通常、医師は特殊な精密器具を使って3個の骨の損傷面を取り除き、そこへ代わりのインプラントを固定します。

大腿骨面は、元の骨とほぼ正確に一致する丸みのある金属コンポーネントと置き換えます。脛骨面は、金属コンポーネントとなめらかなコンポーネントと置き換えます。

このコンポーネントは、超高分子量ポリエチレンという素材から作られ、軟骨の役目を果たしています。膝蓋骨の裏面も、同じポリエチレン製のインプラントと置き換える場合があります。

使用する膝関節部品は障害の程度によって異なります。( 程度が比較的軽い場合は骨の表面だけを削って置き換えますが、膝関節の高度な破壊が進み、障害が著しくなると、複雑な膝関節部品が必要になります。)

ナビゲーションシステム

当院の人工膝関節全置換術では、先進医療の「ナビゲーションシステム」を導入しております。

人工膝関節全置換術で最も大切なことはインプラントを適切な位置に設置することにより、膝関節の機能改善を行うことであります。このナビゲーションシステムでは、機械本体と大腿骨・脛骨に取り付けた赤外線マーカーを使用して、治療する膝関節の部位と手術器具の位置関係を正確に計測し、リアルタイムにコンピューターモニター画面上に表示することで、医師の手術を的確にサポートします。このナビゲーションシステムの導入により、より高い精度の手術を実現させることが可能になります。

手術の流れ

外来にて(麻生リハビリ総合病院)

検査

麻生リハビリ総合病院外来にて手術前検査を行い、全身状態をチェックいたします。必要に応じて当院の内科を受診していただくこともあります。
通院が困難な患者様は少し余裕をもって入院して頂き、全身状態をチェックすることも可能です。

自己血採血

手術ではあり程度の出血が予想されますので、貧血でない患者様や80歳以下の患者様は外来にて自己血をあらかじめ採っておきます。 量は400~800cc(1回400cc)です。保存期間は5週間可能となっております。
自己血は患者様自身の血液を用いるため、感染や免疫反応などの輸血に伴う副作用を回避できるというメリットがあります。

インフォームドコンセント

インフォームドコンセントとは、手術などに際して医師が病状や治療方針をわかりやすく説明し、患者様の同意を得ることです。基本的に外来でお話しいたします。
インフォームドコンセントの主な内容は以下の通りです。

  • 手術の目的
  • 手術方法
  • 手術によって期待できる効果
  • 麻酔の危険性について
  • 輸血について
  • 合併症について
  • リハビリテーションについて

合併症

麻酔に関するもの、感染、下肢深部静脈血栓症、肺塞栓症、出血ならびに輸血のリスク、関節可動域制限、ゆるみ、骨折、金属・セメントアレルギー、異所性骨化、神経麻痺など。
金属アレルギー疑いのある患者様は、パッチテストというものを行い実際にアレルギーがあるかどうかを調べることもあります。
※上記の合併症の中で最も重要なのは、下肢深部静脈血栓症などが原因で起こる肺塞栓症です。下肢の深部静脈に血栓ができて、下肢の皮膚は変色(紫色か赤色)し、むくみ(浮腫)を生じます。
しかし、症状がない時もあります。特に血管の走行上の原因で左下肢に起きやすいです。原因は血液のうっ滞がほとんどで、他に血管障害、血液凝固能の亢進などがあります。
血栓が肺にいくと肺梗塞を起こし、体に酸素が取り込みにくくなり重篤になる時があります。よって、肺梗塞の原因の一つの深部静脈血栓症を起こさない予防が大切です。

当院での予防法

  • 下腿から足に弾性ストッキングや弾性包帯を使用する。
  • 間欠的空気圧迫法(足を反復的に圧迫する装置を使用することにより、静脈血流を保つ)。
  • 早期リハビリテーション(術後早期の足関節自動運動、術後翌日より起立・歩行訓練など)を行う。
  • 血栓をできにくくする薬を使用する。
  • 脱水予防を行う。

入院後(麻生総合病院)

入院

手術は隣接の麻生総合病院で行います。手術前日に麻生総合病院に入院していただきます。
手術前に麻生リハビリ総合病院外来で必要な検査が終わっていれば、入院後の検査はほとんどありません。

手術準備

当日、腕に小さなチューブ(静脈ライン)を挿入します。
このチューブは、手術中に抗生物質やその他の薬を投与するのに使います。

手術室へ入室

手術は、手術室の中でも一番清潔度が高い“バイオクリーンルーム”という手術室で行います。

麻酔

手術室に入ると麻酔が行われます。麻酔は麻酔科専門医が行います。
麻酔はほとんど、全身麻酔+局所ブロック注射を行います。

皮膚切開

膝前内側の皮膚を切開します。

展開

筋肉、関節包などを切開し、大腿骨、けい骨(すねの骨)を特殊な機械で削ります。大腿骨側もけい骨側もインプラント(人工膝関節部品)に合わせて骨の形を整えます。膝蓋骨(おさらの骨)も変形が強い時は、インプラントに合わせて形を整えます。

インプラントの固定

骨の切除が済むと、インプラントを骨に固定します。インプラントを正確に設置するためにナビゲーションシステム機械を使用します。

確認

膝関節の安定性や可動域を確認します。

縫合

十分なイソジン入り生理食塩水で洗浄した後、切開した部分を縫合します。
抜糸が必要ないように、皮膚に特殊なテープ剤を貼ります。

手術終了

手術したところから自然に生じてくる血液などを外へ流し出すために、専用の廃液管(ドレーン)を傷口に挿入します。尿道には排尿のための管が入っております。
手術にかかる時間はおよそ1時間~2時間で、個々の状況によって変わります。

輸血について

手術中および手術後には、自己血で足りない時のみ、他人の血液から調節された輸血を必要とする可能性があります。

手術後

手術室内で手術した部位のレントゲン撮影を行います。
麻酔科医師が血圧や脈拍数、覚醒状態などをチェックし、問題がなければ回復室に向かいます。

病室へ

身体にモニターを付けて、全身状態の管理を行います。
手術翌朝から食事を開始します。

術後について

リハビリテーション

麻酔の効果がなくなり足首が動くようになりましたら、ベッド上で足首を動かす練習を始めます。これは、下肢の血栓を予防する効果もあります。
手術翌日から膝を曲げる練習、起立訓練、ベッド⇔車椅子の移乗動作訓練、可能であれば歩行訓練などを行います。

麻生総合病院から麻生リハビリ総合病院に転院

術後5日目で、隣接の麻生リハビリ総合病院に転院します。麻生リハビリ総合病院では、1日120分のリハビリテーションを行います。
どちらの病院でも、専門性の高いセラピストが最適なリハビリテーションを提供いたします。

リハビリテーションの種類

病室で
  • 持続他動運動器(CPM)を使って膝の曲げ伸ばしを行う訓練
  • 足を垂直にあげるなど簡単な運動
  • 歩行器を使った歩行訓練
リハビリテーション室で
  • 平行棒を使った歩行訓練
  • 杖を使った歩行訓練
  • 階段を昇る訓練
リハビリテーションのプログラム 例

膝を伸ばしたまま、ベッドに座ることができます。膝の経過が良好であれば、CPMを使ってゆっくり膝を曲げ伸ばしします。
ベッド上で足に力を入れるなど簡単な運動を続けます。この頃には、看護師や理学療法士の介助で車椅子に乗ったり、手洗いに行けるようになります。

退院

T字杖歩行の自立、階段昇降、入浴動作などが可能となれば退院することができます。