近年の新型コロナウイルス感染症の流行で、新しいワクチンに対する抵抗が大きかった日本でも、多くの方がワクチンを接種されました。その結果、ワクチンの副反応や重症化を予防することへの理解が進み、大切な情報を知ってご自身の健康を守ることへの意識が高まっています。
日本では小児へのワクチン接種体制は世界的に見てもハイレベルな一方、成人になってからのワクチンには関心が低い傾向にあります。
ご高齢の方、持病のある方はもちろんのこと、年齢を問わず健康寿命を伸ばすためには対策が必要です。
例えば、持病がある方には肺炎を予防することは、思わぬ風邪で重症化しないためにも大切です。若い方では妊娠の可能性を奪う子宮頸がんや、妊娠中に胎児へ影響をもたらす風疹を予防することも大切です。
ワクチン接種は個人の自由選択です。まずは予防できる病気やワクチンの性質の正しい情報を知って、是非、ご自身とっての価値や必要性をご検討ください。
接種 場所 |
ワクチン種類 | ワクチン名 | 負担 形式 |
金額 (税込)/回 |
接種 回数 |
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麻生総合病院 | 肺炎球菌 ワクチン |
ニューモバックス | 公費 (川崎市) |
¥4,500 | 1回 |
自費 | ¥8,250 | 1回 | |||
バクニュバンス | 自費のみ | ¥11,000 | 1回 | ||
RSウイルス ワクチン ※60歳以上の方のみ |
アレックスビー | 自費のみ | ¥27,500 | 1回 | |
帯状疱疹ワクチン ※50歳以上の方のみ |
シングリックス | 自費のみ | ¥22,000 | 2回 | |
子宮頸がん ワクチン |
サーバリックス(2価)ガーダシル(4価) | 公費 (川崎市) |
無料 | 3回 | |
自費 | ¥17,600 | 3回 | |||
シルガード9(9価) ※女性のみ |
公費 (川崎市) |
無料 | 2~3回 | ||
自費 | ¥27,500 | 2~3回 | |||
健診センター | B型肝炎 | ヘプタバックス | 自費のみ | ¥4,950 | 3回 |
麻疹・風疹 ワクチン |
MRワクチン | 公費 (川崎市) |
¥3,200 | 1回 | |
公費 (川崎市) |
無料 | 1回 | |||
自費 | ¥8,580 | 1回 | |||
水ぼうそう | 水痘ワクチン | 自費のみ | ¥7,150 | 1回 | |
おたふくかぜ | ムンプスワクチン | 自費のみ | ¥5,500 | 1回 |
川崎市の公費対象ワクチンについて | ||
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対象のワクチン接種 | 対象者 | 負担金額 |
肺炎球菌ワクチン | 65歳の方※ | ¥4,500 |
子宮頸がんワクチン | 小6~高1女子+キャッチアップ対象者 | なし |
麻疹・風疹ワクチン | 妊娠を希望する女性とそのパートナー | ¥3,200 |
第5種定期事業チケットが届いている方 | なし |
公費対象となるワクチン接種につきましては、期間等が変更になることがあります。川崎市のホームページで再度ご確認をお願いします。
高齢者を対象とした定期の肺炎球菌感染症予防接種(川崎市HPリンク)
ヒトパピローマウイルス感染症(HPVワクチン)の予防接種について(川崎市HPリンク)
川崎市風疹対策事業について(川崎市HPリンク)
風しんの追加的対策ー風しん(第5期)予防接種ー(川崎市HPリンク)
毎週水曜日の午後に、内科外来にてワクチン専門外来を設けています。
などの健康診断については、総生会健診センターで承っております。
詳しくは、「総生会健診センター」のホームページをご覧ください。
ワクチン専門外来:毎週水曜日 午後(13:30~17:00)
水堂 祐広(日本感染症学会専門医・指導医)
月曜~土曜 9:00~17:00(※祝日を除く)
月曜~土曜 10:00~15:00(※祝日を除く)
肺炎はありふれた疾患ですが、乳幼児や高齢者では死亡につながるリスクが決して低くありません。肺炎球菌は主に小児の鼻やのどに生息し、多くは子供の風邪などから大人へ感染すると言われています。この身近な肺炎球菌ですが、肺炎死亡第一位の原因菌でもあるのです。2013年から乳児は肺炎球菌ワクチンが定期接種になり、乳幼児の肺炎や髄膜炎は大きく減少しました。その翌年から高齢者への公費接種も開始されましたが、その広まりはまだ十分とは言えません。
川崎市では65歳の方は生涯1度、公費補助が受けられます。それ以外にも、持病やリスクがある方は年齢を問わず肺炎予防が重要です。現在、公費利用年齢にあてはまらない方も、接種をしていない場合は今の肺炎予防を考えることが重要です。実際には、5年ごとに2種類のワクチンを組み合わせて効果的に予防することが世界的に推奨されています。ご自身の今できる肺炎予防を知りたい方は、是非、専門医にご相談ください。
(推奨される方)
2歳までにほぼすべての子どもが感染するとされ、その後生涯にわたって何度も感染と発症を繰り返します。特に高齢者や慢性の基礎疾患(心疾患、糖尿病、慢性腎臓病、COPDなど)がある場合は肺炎などの合併症を引き起こし介護施設などでも集団発生することがあります。
(推奨される方)
幼少期に水疱瘡にかかると、ウイルスは体内の神経節に潜み続けます。
この時に獲得した抗体は年齢とともに減少するため、体力を消耗した時などに潜伏していたウイルスが活発化し、帯状疱疹を発症します。帯状疱疹は年齢を問わず発症しますが、高齢者では80歳までに3人に1人が発症するともいわれます。発症したときの辛さだけでなく、治癒した後も非常に辛い神経痛(PHN)など、後遺症に悩まされることで有名です。
帯状疱疹の予防には、50歳以上の方を対象に2種類のワクチンが推奨されています。1つは小児の接種に使われる弱毒化ウイルスから作られた生ワクチンでいわゆる「水痘ワクチン」、もう一方はウイルス抗原の遺伝子組み換えで製造された不活化ワクチン「帯状疱疹ワクチン(シングリックス®)」です。どちらも一定の効果が認められていますが、接種回数、値段、また副反応や予防効果にも違いがあります。持病があっても接種しやすいことや、予防効果の高さから基本的には帯状疱疹ワクチン 『シングリックス®』 をお勧めしています。どちらのワクチンもお選びいただけますので詳しくは担当医にお尋ねください。
HPV(ヒトパピローマウイルス)は、身の回りに存在するありふれたウイルスです。その中でも子宮頸がんを引き起こすことのある約13種類を『ハイリスクHPV』といいます。性交渉の経験があればこのハイリスクHPVにはほとんどの人が感染するといわれています。ただし、感染=がん発症というわけではありません。大抵の場合、ウイルスは自身の免疫で不活性化されます。しかし、一部の女性は感染後ウイルスの活動が持続し、異形成の段階を経て子宮頸がんを発症すると、妊娠前に子宮を失ったり、命を落とすこともあります。また、ウイルスに感染したことによる初期の変化(軽度異形成など)が見つかることは若い年代ではめずらしくなく、この場合、数か月ごとの検査通院が必要になります。ワクチンにより90%以上の確率でがんを予防できるのは子宮頸がんだけです。男性の場合、陰茎がんの原因となることもあるため、性交渉による感染リスクを下げるためにも海外では女子だけでなく男子も接種しています。2・4・9価ワクチンの違いは、予防できるHPVウイルスの種類の数です。性交渉の機会を持つ前に接種することが大切です。多感な年齢の接種ですので婦人科外来でサポートしています。(中高生向けのパンフレットもご用意しています。)
(推奨される方)
血液感染では最も感染力が強く、急性肝炎や劇症肝炎を発症することもあります。軽症で済むと気づかないうちにキャリアとなりパートナーや家族への感染させることもあります。キャリア女性*から生まれた赤ちゃんは、出生直後にグロブリン注射など特別な対応が必要になります。
*キャリアとは、病原性のあるウイルスに感染しながら、その後発症することなく、持続的に感染している状態にある人のことを指します。
(推奨される方)
医療機関や感染のリスクのある環境にご勤務、入学される方など
成人になっての感染は重症化することがあります。特に女性は妊娠中に感染すると流早産のリスクだけでなく、赤ちゃんが心臓・耳・眼等に異常を持って生まれてくることがある胎児の先天性風疹症候群が問題となります。パートナーから妊婦が感染するケースが多いため、男女問わず接種が推奨されています。
(推奨される方)
水痘感染の問題は、成人感染の重症化、妊娠中の流早産のリスク、胎児の多発奇形、発達遅延などの神経障害のリスクです。また、すでに罹ったことがある方も、獲得した抗体が年齢ともに減少すると起こりやすくなる帯状疱疹を予防するためにもワクチンは有効です。水痘ウイルスに感染しなければ、帯状疱疹を発症することはありません。これまで水疱瘡に罹ったことがなく、ワクチン接種例もない方は是非ご検討ください。近年、帯状疱疹にかかった方からの成人の水痘感染も多く報告されてきています。
(推奨される方)
成人男性が感染をすると、睾丸炎をきたし無精子症という男性不妊を引き起こす場合があります。また感染後に難聴を起こす人もいます。
先進国でムンプスワクチンが定期接種でないのは日本のみとも言われ、4~6年毎に小児を中心に大規模な流行が発生しています。
(推奨される方)
おたふくかぜに罹ったことが無い男性の方は是非ご検討ください。