腱板とは、肩甲骨と上腕骨を繋ぐ筋(インナーマッスル)の総称であり、前方の肩甲下筋、上方の棘上筋、後上方の棘下筋、後方の小円筋と4つの筋から構成されます(図1)。腱板断裂は、ほとんどが上方の棘上筋腱および棘下筋腱に起こり、まれに前方の肩甲下筋腱の損傷を合併します。
腱板断裂は腱板の退行性変化を基盤として主に50歳以上の中高年に好発し、多くは外傷を契機として発症し肩の痛みや脱力を主訴とすることが多いですが、高齢になるほど腱板自体の変性が進行するため、軽微な外力により断裂しやすくなります。実際、高齢者では外傷の既往を全く自覚していないことも少なくありません。
保存療法と手術療法がありますが、リハビリテーションや関節内注射などの保存療法に抵抗し、継続する肩関節の夜間痛、挙上時の疼痛、挙上困難を認める場合は手術療法が選択されます。
当院ではより低侵襲(傷が小さい)で術後の疼痛の少ない鏡視下修復術を行っております。
手術は全身麻酔下に行います。皮膚切開は肩関節を中心に約1cmの創が計5~6個必要となります。関節鏡視下に断裂した腱板の断端を確認し、正常な位置の上腕骨に縫合します。骨に腱板を縫い付けるため、アンカーという糸のついた楔を使用して縫合します。
アンカーを骨の中に埋め込み、そこからでている糸で断裂した腱板を修復します(図2)。アンカーは断裂の大きさにもよりますが、4~6個程度使用します。基本的に挿入したアンカーは抜去する必要はありません。
腱板の断裂が極端に大きく短縮している場合は、縫合が不可能な事があります。その際は筋肉を肩甲骨から剥離して外側へ前進させる棘下筋回転移行術を選択することがあります。65歳以上の方で修復困難の場合には人工関節(反転型人工関節)をおすすめすることもあります。
術後、断裂の大きさによっては固定方法が異なります。断裂の小さい場合は約3週間の肩固定装具固定後1週間のスリング固定を行い、断裂の大きい場合は6週間の外転装具の後、スリング固定を行います。入院期間は状態や患者様の背景にもよりますが、装具が外れてからの退院であれば約1ヶ月、その前であれば1週程度でも退院可能です。
肩外転装具
リハビリテーションは術後数日目より開始します。しかし、自分の力で肩関節を挙上するような自動運動は術後4~5週からとなります。
日常生活が支障なく過ごせるようになるまで3ヵ月を要し、可動域(肩の動き)が正常化するまでには6ヵ月程度の期間を要します。
スポーツ活動もその時期(6ヵ月)から開始となります。
以上が腱板断裂についての説明です。ご自身の病気を理解し、手術の方法や術後経過などについて疑問点がございましたら、入院時に担当医までお尋ねください。
麻生総合病院 スポーツ整形外科